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先輩の就活の話

高校時代の部活の先輩のSさんは、大人になってからも友人として気さくに付き合える人です。おおらかで気配り上手で、面倒見も良いことから周囲からも信頼されていました。社会人になってからは別々の道に進んだわけですが、きっと皆に頼りにされているんだろうな、と想像するのは難くない、そんな人なのです。
Sさんが糖尿病になったという話を聞いた時はびっくりしました。と同時に、確かに近年の太りようは少し心配でもありました。学生時代からふくよかな体型ではあったのですが、社会人になってから年々太っていったので「少しはダイエットした方がいいですよ」と冗談めかして言った事もありました。
糖尿病対策はちゃんとやってるよ、と笑うSさんですが、どことなく気落ちしているようでした。少し前に結婚されたSさんは、糖尿病対策の料理を奥様に作ってもらい、血糖値を下げる薬などを服用して対策されているとの事です。
なら大丈夫かな、と安心していたのですが、ある日私の携帯電話に奥様から電話がかかってきました。
これは何事かと思いよくよく話を聞いてみると、Sさんが自分が死んだときの事をあれこれ話して身辺整理をしだした、という事でした。
私もびっくりして、慌ててSさんに電話をして急遽会う事にしました。
もしかして、奥さんにも隠している、何か大きな病気をしているんじゃないですか?それで身辺整理をしているんじゃないですか?そのように問い詰めました。
それを聞いたSさんはいきなり笑い出しました。
あっけにとられる私を見て、再び拭き出したSさんですが、「違う違う、今やってるのは終活だよ」と言いました。
終活。言葉は聞いたことがあるものの、それって要するに死ぬ前の身辺整理でしょうと言うと、それは違うと返されました。
今回の病気で人はいつ死ぬか分からないと思い知ったとの事です。ならばいつ死んでもいいように備えておくという事は大事なことで、それは家族や知人への負担を出来るだけ減らしてあげることに繋がる。悲しみから立ち直るための手助けを、生きているうちにするのだと力説されました。
終活と言っても特別な事はあまりなく、葬式はどのようにして欲しいかと伝えておく、保険などの検討、周囲の人に死後に読んでほしい手紙を書いておくといった事からやっているとの事でした。それは別に死を望んでいるのではなく、もしもの時のための備えなのだと。
自分が死んだ後の、周りの人の悲しみやその後の人生すら気に掛けるとは、Sさんらしいと思いましたが、これからの日本においては、そういったやさしさが当たり前になってくるのかも知れません。